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最初に聴くべきオルガンCD十(九) (例?1)

入門用と言っても、いや、だからこそ、手を抜くわけにはいかない。でlきるだけ個性の際だった、しかしその個性が「解りやすい」録音を選んでみた。これらを聴いて、オルガン音楽の面白さ・多彩さ、オルガン演奏の醍醐味を賞味して欲しい。


カバニリェスはオルガンのガウディだ!
   スパニッシュ・オルガンの強烈な個性 と オルティス神父の艶歌


ホァン・カバニリェス/パウリーノ・オルティス (ダローカとトレドの歴史的オルガン)
Juan Cabanilles - En los Organos de Daroca y Toledo
P. Paulino Ortiz

Hispavox (Sp) 5 66026 2
- Rec: early '70s
●Hispavox の当シリーズのうち、オルガン盤は数枚出ていた。録音の少ないスペインの歴史オルガン音盤の中では、優れた録音のひとつ。中でもこのカバニリェスが秀逸。カバニリェスも纏まった録音が少ないが、やや古色ながらも力強いオルティスの演奏は、特にトレドの水平トランペット管の剛毅な音響を下支えする。 Fugetzu ☆☆ ; ●技術ではなく芸術的表現力こそはスペイン人音楽家が理想として求めたものであった。 彼らの伝統である「情緒表現」は、オルガンにおいてはカバニーリェスで頂点に達する。 有名なエル・エスコリアール修道院のオルガニスト、パウリーノ・オルティス神父の素朴で泥臭いが情熱的な演奏は カバニーリェスの音楽の魅力を忠実に伝えており、深い感動を覚える。同じシリーズで、同神父がカベソンを弾いた1枚 (7 63600 2) が出ており、これも悪くはない。 Toku ☆☆



くつろいで聴けるフランスのノエル《クリスマス・キャロル》

バルバートル:ノエル集/パスカル・メリス (カルカソンヌ 城壁内旧市街の教会)
Claude-Bénigne BALBASTRE - Les Noëls / Pascale MELIS à l'orgue historique de la Basilique St Nazaire & St Celse de Carcassonne
Coriolan (F) COR 331 702 (2-CD set)
- Rec: 1997.04
●これを聴くまでメリスというオルガニストを知らなかったが、音楽に心地よい集中力と求心力があり、何度聴いても楽しめる1枚だ。変奏ごとに響きの性格を自然に膨らませる音色感は見事。また闊達な演奏ながら、演奏個性が前面に出しゃばらず、音楽の愉悦が染み出てくる味わい深さを持っている。('03.08.07 修正) Fugetzu ☆☆ ; ●上記シャピュイの録音は永らく絶版だが、幸いにもこの2枚組みがなかなか良い。バルバートルは フランス・バロック期最後の大物オルガニスト・作曲家だが、自ら優れた演奏家だっただけあって なかなか聴き応えのある音楽。当代きってのクラヴサン(チェンバロ)奏者でもあった彼の演奏は人気が高く、クリスマスのミサには彼のオルガンを聴こうとパリのサン・ロック教会に大勢の人が集まった。あまりにも多く詰めかけるので、大司教は1762年、演奏を禁じてしまった。メリスの演奏は、歯切れの良いアーティキュレーションが爽やか。コリオラン・レーベルは 在庫が切れたら再プレスしないようだから、早めに入手しておいた方がよい。 Toku 1/2


バロック・オルガン芸術の頂点を極めたブクステフーデ

ブクステフーデ: オルガン作品全集/ミシェル・シャピュイ (全5枚)
BUXTEHUDE - L'ŒUVRE D'ORGUE 1 5
Michel Chapuis

Valois (F) V 4431 4435
- Rec: 1972-Sep 1973-Nov
●クラフト同様、やはり立ち返るべき録音のひとつである。シャピュイの直線的快活さが、豊かな会堂の響きを伴いつつ、鋭いエッジで豪快に斬り込む。快感すら覚える。ブクス特有の音楽進行での突如の断絶、和声的奇形などがあるがままに示され、この意外さの面白味こそ、シャピュイのブクスの愉悦であろう。コラールでの明るく磨かれた音色と和声も、ドイツ人系の顰《しか》めっ面的堅苦しさから解放され、心地よい。 Fugetzu ☆☆ ; ●ブクステフーデ・オルガン作品の全曲録音は、現在ではかなりの数に上る。フランスの奏者によるものが多いが、シャピュイの録音を聴けばそれも肯けると言えよう。フランス語も堪能であったこの「デンマークの作曲家」の音楽は、ドイツ的であるとは言い難い。クラフトが弾いたブクステフーデの項で述べた通り、シャピュイの録音の中でも、大理石の内装で豪快な響きを持つチオンビルの教会で弾いたものが格別に良い。 Toku ☆☆1/2


革新的な古典解釈: シャピュイのバッハ

バッハ: オルガン作品集/ミシェル・シャピュイ (14枚組)
J. S. Bach - l'œuvre d'orgue / Michel Chapuis
Auvidis (F) 4864 (14 CDs)

●いささか消去法的要素もなくはないが、数あるバッハのオルガン全集のうち、優れた音色感と巧緻な和声感、そして研ぎ澄まされたアーチキュレーションに富む、シャピュイ盤を挙げざるを得ないだろう。バッハにおけるシャピュイの妙味は、複雑な対位法作品になればなるほど、その面白みを増す。特にカノン風変奏曲 BWV769 の見事な出来映えは、シャピュイの音楽的本性が、多層多重な音の綾をクリヤに繙(ひもと)く力量に卓(すぐ)れているかを示すものに他ならない。これはまさにシャピュイの和声感覚の卓越性に存するのである。 Fugetzu ☆☆ ; ●昨年没後250年を迎えたこともあって現在、有名無名とり混ぜバッハ・オルガン音楽の全曲録音はかなりの数に上る。 しかし数百曲全ての「演奏」が「音楽的」な内容を伴うことは稀である。 技術的には、些細なミスや、難しいパセージで走ってしまうといった難点はあるのだが、譜読みが浅いとか 音楽的に空疎さを感じるといったことは少ない。また、シャピュイのバッハは極めて色彩的である(個性的なレジストレーション)が、 これも寧ろ、伝えられているバッハ自身のオルガン演奏の特徴と一致するものなのだ。 Toku ☆☆


掛け値なしの名盤: 小糸のCPEバッハとヴァイセナウのホールツァイ

エマヌエル・バッハ: オルガンのためのソナタ/ケイ小糸 (ヴァイセナウのホールツァイ・オルガン)
Carl Philipp Emanuel Bach - Sonates pour Orgue
Kei Koito

Harmonic Records (F) H/CD 9142
●快活でシャープ、かつ豊かな音楽に溢れた小糸のエマヌエル・バッハ。スタッカートが 強く感じられるものの、エマヌエル・バッハが持つ形式性を超えた情念の迸りを、筆勢鮮やかに淀むことなく 表現しているのがよい。Fugetzu 1/2 ; ●作曲者のエマヌエル・バッハ、演奏者の小糸、ホールツァイの楽器と3つ揃って今なお過小評価されていることを如実に示す録音だ。 きわめて音楽的で正確無比、にも拘わらずフレクシブルなフレージングと アーティキュレーションは 聴く者を厭きさせない。音楽の流れに自然で、恣意的なところが感じられず好感が持てる。 小糸の演奏が示す音価の扱いは、オルガンという楽器の効果的・合理的な奏法という点で、示唆するところが大きい。 18世紀南ドイツの最も優れたオルガン製作者、ホールツァイがヴァイセナウの教会に設置した楽器を使用。 19世紀の改変で失われてたストップを補って、1989年にオリジナルの仕様に修復されたもの。ロマン派様式に近づいたオルガンの多彩な音色を聴くことができる。Toku ☆☆1/2 V (02.06.21 改訂)
(倒産したHarmonic Records は Harmonic Classics という名で再生、このCDも再発されたようだ。)



夭折の才媛ドゥメシュによる極め付きのフランク

フランク: オルガン作品集/ジャンヌ・ドゥメシュ (パリ、マドレーヌ教会)
César Franck : Intégrale de l'œuvres pour orgue
Jeanne Demessieux

festivo (NL) FECD 155-156 (2-CD set)
- Rec: 1959-Jul
●数あるフランクのイチオシ名盤。解釈そのものではなく、フレーズの隈取りとテ ンポの取り方の巧妙さに特徴がある。中でも「交響的大作」とコラール第2番は見 事だ。ドゥメシュはフランクを窮めて即物的に扱う。特になかなか解決しない、 漠としがちな和声の姿態変容を明快に捉える。決して表現的な濃さはないが、フ ランクに纏わりつきがちな靄が一掃され、音楽も無駄を語ることがない。オルガ ン操縦術がこれほど見事なフランクには、滅多にお耳にかかれないだろう。 Fugetzu ☆☆1/2 ('03.10.26 修正)Toku ☆☆1/2 V


極上のシンフォニックオルガンで聴くクラシックの名曲: トム・マレーの名演

トランスクライバー(編曲者)の芸術/トーマス・マレイ (イェール大学、ウールズィ・ホール)
The Transcriber's Art / Thomas Murray
Gothic (USA) CD 49054

●トランスクリプションものは、どうも横目で見ているところがあったが、演奏そのものこそが、原曲という桎梏から聞き手を解放すると実感。音色の豊かさと技量、弱音での表情の美しさ、また衒いのない清澄・精妙な音楽。まさに名演。原曲と比べると、非常にストイックな印象があるが、原曲が「本然的」に持つ構造、浪漫や繊細な感興が非常によく出ており、「マ・メール・ロワ」など、管弦楽より魅惑的なイメエジだ。 Fugetzu ☆☆ ; ●E.M.スキナー作、北米随一のシンフォニックオルガンを 駆使してトーマス・マレーが余裕たっぷりに音楽的な演奏を聴かせる。小品を中心にクラシックの名曲を集めたレパートリーだが、 いずれもオリジナルの楽器(編成)では聴くことのできない音色や、オルガンならではのデュナーミクによる表現に 感心させられる。気楽に聴けると同時に、繰り返して聴くほどにますます大オルガンならではの面白さがわかる名演だ。 編曲の方がつまらないオリジナル演奏よりは余程面白いという好見本だ。 Toku ☆☆  このCDを購入


コシュローによる究極の即興演奏

ピエール・コシュロー/ノートルダムのオルガニスト
PIERRE COCHEREAU : l'organiste de Notre-Dame
Solstice (F) SOCD 94/96 (3-CD set)

●コシュローのノートルダムでの即興録音は、かなりの量に上ると聞いているが、 これまでリリースされていた録音が何だったのか、と言いたくなるような凄絶な音楽の記録となっている。74年の「スケルツォ・サンフォニック」は、まるで輝 きが繚乱する生命体。3枚目のミサでの即興も、深淵を抉る力だけではなく、何か予兆的ともいえる広大な包容力ある演奏。このボックスは、コシュローのみならず、即興演奏史に深々と爪痕を残す記録といえよう。 Fugetzu ☆☆☆ V ; ●何の躊躇いもなく、「ここにはオルガン録音史上最も重要な記録となった演奏が幾つも含まれている」と言うことが出来る。 1955年から84までパリ・ノートルダム寺院のオルガニストを務めたコシュローが遺(のこ)した即興録音は多いが、パンスメイユが選曲したおかげで、今までに日の目を見たものと隔絶して優れた演奏が含まれている。1曲選ぶなら2枚目最後のスケルツォ・サンフォニックだろう。だが、(ポンピドー大統領の葬儀を含む)ノートルダムのミサや晩祷の記録から選ばれた3枚目全21曲を通して聴くなら、他に類を見ない衝撃的な演奏が次々と現れ、本当の凄さが分かる。それにしても、芸術の都パリではこんな途方もない音楽が、毎日曜のようにタダで聴けたのだ。それを追体験できる我々は、コシュローを説得して、ノートルダムのロフトで16年近く毎日曜のようにテープレコーダーを回し続けたエンジニアのカルブ(FY-Solstice レーベルのオーナー)に感謝せねばならない。なお、作品演奏が中心の1枚目は特筆すべきものではない。('03.10.24 修正) Toku ☆☆☆ V


目から鱗! シャプレによるエトナ火山の噴火

ノートルダムの現代オルガン/クセナキス、シェーヌ、シャプレ (パリ。ノートルダム大聖堂)
The contemporary organ at Notre-Dame de Paris - XENAKIS, CHAYNES, CHAPELET / Francis Chapelet, etc.
Solstice (F) SOCD 192

●クセナキス、シェーヌ、シャプレの作品・即興をまとめた1枚。不思議なこと に一番精細を放つのは、シャプレの火山に寄せた即興演奏だ。前2者はクラスタの威容に直撃される妙味はあるが、オルガンという楽器の必然性をとことん感じないのに対し、火山活動を擬した音の生態的変容でありながら、クラスタを含め、シャプレは遙かに「オルガン音楽としての」生と意味とを獲得している。 火山に魅せられた風琴奏者シャプレの録音の中で、異彩を放つ1枚! Fugetzu 1/2 ; ●得意と思われたイベリア古典でのシャプレは、'70年代以降マンネリ化。だが、この録音を聴けば合点がいくかもしれない。ここに収められた演奏は商業的録音を前提としたものではない。だからこそ(?)、ほんとうにシャプレが演りたい音楽はこれだったのだと納得できるほど、音楽に自発性がある。オルガンという楽器から、火山の噴火やそれにまつわる情景をこれほど面白く、また感動的に描き出せるとは驚きである。Toku ☆☆



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管風琴音盤百選: 最初に聴くべきオルガンCD十選 (Ex.1)
Last updated: 2002. 9. 2 ... Compiled by Toku <cd100@orgel.com> .



ホワイトキューブ・オルガンコンサート バーチャル・コンサート/MP3 オルガンの美術館
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