入門用ディスク
ロマン派・20世紀 /名演を聴く

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◆1 ヴァージル・フォックスのカリスマ

ヴァージル・フォックスの芸術 Vol. 2 (ニューヨーク、リヴァーサイド教会 [エオリアン=スキナー])
THE ART OF VIRGIL FOX - Volume II
EMI Classics (USA) 7243 5 65913 2 5

●フォックスのアクの強さは、正直、苦手でもあった。しかし、憑依したかの如き 熾烈な集中力を持つ一方で、とろけるほど美しい歌心を表現できる演奏家でもある。このアルバムは 古典から現代までの小品を集めた録音だが、美しいながらも何と血潮の濃い音楽になっていることか! 少々 過剰ともいえる表現性は、しかし彼だけしかなし得ない形で、最も自然な音楽の流れを作り出していることがわかるだろう。 Fugetzu ☆☆ ;  ●フォックスの死後20年が経過したが、このCDを聴いて改めてその偉大さを認識した。 彼の演奏には即興性は殆ど感じられず、一見「音楽的」とは言い難いところがある。 そもそも近代的なオルガンはその究極の発達の結果、あまりにも操作が複雑でそれ自体が極めて非音楽的な存在になった。 その楽器を彼は、完全に自らの身体の一部として操るのである。 収録されている曲の大半は、せいぜい佳作と言えるほどの通俗的な音楽だ。 それが、あたかも錬金術のごとく、有機的に統合された巨大音楽構築物にメタモルフォーゼされる様は、オルガン演奏では他に例がない。 それを支えるルバートとクレッシェンディが見事だ。先入観なしに、しかし集中して聴いて欲しい。楽器の存在を完全に忘れるだろう。 Toku ☆☆☆  このCDを購入


Vol. I も同様に優れている。どちらを聴くか、両方取るか、まずは曲目で決めてもいいだろう。 Toku ☆☆1/2

Vol. III は対照的に、フランス・ロマン派や近代のオリジナル作品が中心を主体に聴ける。圧倒的な演奏の強度。 Toku ☆☆
 [2004年6月現在、Amazon.jpでは在庫切れ]

なお、3枚とも Amazonで 最初の5曲の冒頭を試聴できる。

◆2 デュリュフレ・トッカータの超演 (エスケシュは救世主か)

チエリ・エスケシュによるデュルフレ・トリビュート (パリ:サンテチエンヌ・デュ・モン)
Hommage à DURUFLÉ / Thierry ESCAICH
Calliope (F) CAL 9939

● 恐るべきオルガニスト、エスケシュによるデュルフレ・トリビュート盤。自作 を除く作品演奏という観点からも興味深いが、内容の素晴らしさに度肝を抜かれる。「組曲」は、この作品の持つダイナミクスを徹頭徹尾引き出した演奏で、他の同曲録音では類例を見ない。激流と静粛な深淵とが頻繁に交差し、デュルフレの音楽に本来存する濃厚さが強い求心力を伴って、初めて顔を出したといってよい。また「4つのモテット」につけられたエスケシュの即興も、大変見事なもの。 改めてデュルフレの音楽の奥行きを実感できる 1 枚である。 Fugetzu ☆☆1/2 ('03.08.28 修正) ● パリ音楽院で8つのプリミエ・プリを取り、現在は母校で作曲を教えるエスケシュ。オルガニストとしてはデュリュフレの後継者として、サンテティエンヌ・デュ・モン教会の主席奏者を務める。特に即興演奏を得意とし、このCDでもデュリュフレのモテトでアルテルナティムに奏される即興(特にトラック12)が良い。デュリュフレのトッカータは、終結部に向けての演奏が圧巻。録音も透明感が高い。Toku ☆☆ V  ('03.06.20 up)  このCDを購入

◆3 フランクの名演はこれだッ!

フランク: オルガン作品集/ジャンヌ・ドゥメシュ (パリ、マドレーヌ教会)
César Franck : Intégrale de l'œuvres pour orgue
Jeanne Demessieux

festivo (NL) FECD 155-156 (2-CD set)
- Rec: 1959-Jul
●数あるフランクのイチオシ名盤。解釈そのものではなく、フレーズの隈取りとテ ンポの取り方の巧妙さに特徴がある。中でも「交響的大作」とコラール第2番は見 事だ。ドゥメシュはフランクを窮めて即物的に扱う。特になかなか解決しない、 漠としがちな和声の姿態変容を明快に捉える。決して表現的な濃さはないが、フ ランクに纏わりつきがちな靄が一掃され、音楽も無駄を語ることがない。オルガ ン操縦術がこれほど見事なフランクには、滅多にお耳にかかれないだろう。 Fugetzu ☆☆1/2 ('03.10.26 修正)Toku ☆☆1/2 V

◆4 オルガンの音色機能が120%力を発揮するとき

グレート・ヨーロピアン・オーガン No.53 カリオ教会/キース・ジョン
Great European Organs No. 53 - Keith John
plays the Organ of the Kallio Church, Helsinki, Finland

Priory (UK) PRCD 638 - Rec: 1996-Feb
●ジョンの技術・音楽性両方の実力に驚かされる1枚。リストとシェーンベルクが 特筆もの。リストは通常のオルガン版ではなく敢えてピアノ版からの編曲である。しかし、風琴的表現力をピアニスティックな特質へ「翻訳」するものに非ず、むしろ大袈裟な慟哭と浄福劇に終わりやすい原曲を根底から逆照射するのであり、淡泊だが密度の濃さに改めて驚かされる。同じ意味で、駄作と思われてきたシェーンベルクも同様。豊かで適切な音色と全ての音が克明に聞こえる演奏により、初めて真価を問うたといえよう。聴くほどに味わい深い。Fugetzu ☆☆ ;  ●カリオ教会のオルガンは、フィンランド初のフランス・ロマン派様式。 聴きやすいモーツァルトや精緻なブラームスの編曲に、ロマン派・20世紀の 重要作品を組み合わせたアルバム。ここでも音色の変化が聴き所の一つ。Toku ☆☆ ('03.10.18 修正)   BBC Music Magazine : 「驚くほど多彩な音色 ・ 万華鏡のようなレジストレーション」、"(The Kallio Church organ is) capable, in the hands of an artist with the ingenuity of Keith John, of an astonishing variety of tone colours and blends. John's variations of registration are kaleidoscopic and his handling of this whole exploration of variation form is masterly."

◆5 現代音楽が面白いわけ

ノートルダムの現代オルガン/クセナキス、シェーヌ、シャプレ (パリ。ノートルダム大聖堂)
The contemporary organ at Notre-Dame de Paris - XENAKIS, CHAYNES, CHAPELET / Francis Chapelet, etc.
Solstice (F) SOCD 192

●クセナキス、シェーヌ、シャプレの作品・即興をまとめた1枚。不思議なこと に一番精細を放つのは、シャプレの火山に寄せた即興演奏だ。前2者はクラスタの威容に直撃される妙味はあるが、オルガンという楽器の必然性をとことん感じないのに対し、火山活動を擬した音の生態的変容でありながら、クラスタを含め、シャプレは遙かに「オルガン音楽としての」生と意味とを獲得している。 火山に魅せられた風琴奏者シャプレの録音の中で、異彩を放つ1枚! Fugetzu 1/2 ; ●得意と思われたイベリア古典でのシャプレは、'70年代以降マンネリ化。だが、この録音を聴けば合点がいくかもしれない。ここに収められた演奏は商業的録音を前提としたものではない。だからこそ(?)、ほんとうにシャプレが演りたい音楽はこれだったのだと納得できるほど、音楽に自発性がある。オルガンという楽器から、火山の噴火やそれにまつわる情景をこれほど面白く、また感動的に描き出せるとは驚きである。Toku ☆☆

◆6 驚愕のオルガン即興

ピエール・コシュロー/ノートルダムのオルガニスト
PIERRE COCHEREAU : l'organiste de Notre-Dame
Solstice (F) SOCD 94/96 (3-CD set)

●コシュローのノートルダムでの即興録音は、かなりの量に上ると聞いているが、 これまでリリースされていた録音が何だったのか、と言いたくなるような凄絶な音楽の記録となっている。74年の「スケルツォ・サンフォニック」は、まるで輝 きが繚乱する生命体。3枚目のミサでの即興も、深淵を抉る力だけではなく、何か予兆的ともいえる広大な包容力ある演奏。このボックスは、コシュローのみならず、即興演奏史に深々と爪痕を残す記録といえよう。 Fugetzu ☆☆☆ V ; ●何の躊躇いもなく、「ここにはオルガン録音史上最も重要な記録となった演奏が幾つも含まれている」と言うことが出来る。 1955年から84までパリ・ノートルダム寺院のオルガニストを務めたコシュローが遺(のこ)した即興録音は多いが、パンスメイユが選曲したおかげで、今までに日の目を見たものと隔絶して優れた演奏が含まれている。1曲選ぶなら2枚目最後のスケルツォ・サンフォニックだろう。だが、(ポンピドー大統領の葬儀を含む)ノートルダムのミサや晩祷の記録から選ばれた3枚目全21曲を通して聴くなら、他に類を見ない衝撃的な演奏が次々と現れ、本当の凄さが分かる。それにしても、芸術の都パリではこんな途方もない音楽が、毎日曜のようにタダで聴けたのだ。それを追体験できる我々は、コシュローを説得して、ノートルダムのロフトで16年近く毎日曜のようにテープレコーダーを回し続けたエンジニアのカルブ(FY-Solstice レーベルのオーナー)に感謝せねばならない。なお、作品演奏が中心の1枚目は特筆すべきものではない。('03.10.24 修正) Toku ☆☆☆ V



管風琴音盤百選 入門用ディスク
ロマン派・20世紀
Last updated: 2003. 9. 19 ... Compiled by Toku <cd100@orgel.com> .


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