12) トランスクリプション(ルメア、T・マレー)
The Transcriber's Art / Thomas Murray Gothic (USA) CD 49054 ●トランスクリプションものは、どうも横目で見ているところがあったが、演奏そのものこそが、原曲という桎梏から聞き手を解放すると実感。音色の豊かさと技量、弱音での表情の美しさ、また衒いのない清澄・精妙な音楽。まさに名演。原曲と比べると、非常にストイックな印象があるが、原曲が「本然的」に持つ構造、浪漫や繊細な感興が非常によく出ており、「マ・メール・ロワ」など、管弦楽より魅惑的なイメエジだ。 Fugetzu
Bach - Concertos d'après Vivaldi / Jean Guillou Philips (F) 454 653-2 - Rec:1968-Apr ●バッハのソロ協奏曲集でこれほど面白い録音は他にない。特に圧巻は、本来チェンバロ用に編曲されたBWV 971だろう。聊かギユーが手を加えているが、これほど直進的な躍動感に満ち、切れ味にすぐれた演奏を聴いてしまうと、原曲がこれではないかという心持ちにさえなる。 Fugetzu
Toccata! Keith John plays the Organ of St Mary's, Woodford Priory (UK) PRCD 002 - Rec:1987-May ●ジョンは、一聴、ギユーを喚起するものの、さらにクール。少しも脂ぎったところがなく、全体 きっぱり醒めた音楽になっている。特に、透けて見えるような音響と、少しも曖昧さを許さぬ 緻密なアーチキュレーションに統率され、オルガンらしからぬ?感触すらある。この録音で最も見事なのは、 ラフマニノフ〜ジョン編のパルティータだろう。Fugetzu
Rhythmic Energy - I Keith John plays the Organ of the Hallgrimskirkja, Reykjavik Priory (UK) PRCD 532 - Rec: 1995-Feb/Mar ●ジョンの面白さは、緻密だが肩のこらない音楽表現と精緻な風琴演奏技術の見事な止揚にあり、風琴奏者として奇跡的な均衡の上に成り立つ。彼が自身の編曲に拘泥する理由もそこにあると思う。特に楽器の音色パレットを豊かにかつ全く適切に使える音感覚、また混濁なく全ての楽音を克明に聞かせるアーティキュレーションなど、聴く者を飽きさせることはない。このチャイコフスキーやプロコフィエフは、面白いだけではなく、聞こえない音が全くないという驚異の演奏だ。風琴演奏の極北とも言えるジョンを聴くべし。 Fugetzu ☆☆ ; ●レイキャビクの街を見下ろすアイスランド最大の教会に設置(1992年)された大型オルガンを使用。 ジョンの編曲演奏による「くるみ割り人形」は、現代オルガンの音色可能性を極限まで追求した名演。 通常のオルガン演奏とは隔絶しているが、確固とした合理性に裏付けられたものであることは言うまでもない。トランスクリプションが、充実したオルガン音楽を求めた結果であることを雄弁に示す一枚。 Toku ☆☆1/2 ('03.10.18 修正)
Holst: The Planets / Peter Sykes Raven (USA) OAR-380 - Rec:1995-Oct ●オルガンによる「惑星」編曲は、下手をすると、虚仮おどしで劣悪な趣味を露呈しかねない陥穽と背中合わせにある。 だが、サイクスの録音は、意地悪な聴き手の苦笑いを誘発することはない。 ジラード・オルガンの豊かな音響を活かしながら、大きいがきめ細かな空間画を描いていくようだ。 オルガン編曲の優劣は、オリジナルとの対比の可否よりも、 原曲の範型を忘れ、楽器と音響の「相応しさ」に耳を傾けるべきと考えさせられる1枚。Fugetzu ☆V ; Toku ☆ V このCDを購入 13) 即興の名手 (トゥルヌミール、コシュロー、...)
PIERRE COCHEREAU : l'organiste de Notre-Dame Solstice (F) SOCD 94/96 (3-CD set) ●コシュローのノートルダムでの即興録音は、かなりの量に上ると聞いているが、 これまでリリースされていた録音が何だったのか、と言いたくなるような凄絶な音楽の記録となっている。74年の「スケルツォ・サンフォニック」は、まるで輝 きが繚乱する生命体。3枚目のミサでの即興も、深淵を抉る力だけではなく、何か予兆的ともいえる広大な包容力ある演奏。このボックスは、コシュローのみならず、即興演奏史に深々と爪痕を残す記録といえよう。 Fugetzu
PIERRE COCHEREAU : 12 improvisations inédites (1969) Solstice (F) SOCD 200/1 ●69年夏、コシュローが可搬型ポジティフでツァーを行った記録。彼の音楽性が、決して大オルガン固有の音響に支配されたものだけではなく、小オルガンでも自己の音楽表現手段を確実に浸透できたことがはっきりわかる。教会での分厚く痛々しいクラスタがなくなった分、スポルティフな快走、甘き夢想など、彼の多様な即興の骨格が浮かび上がり、それらが綺羅星の如く鏤められた1枚。 Fugetzu
Pierre Cochereau spielt die Orgel im Kölner Dom Motette (D) CD 12611 (1972年5月30日、ケルン大聖堂におけるコンサート・ライヴ) ●作品演奏と長大な即興からなるコシュローのリサイタル録音。デュプレの暗さを伴わない厭世性、メシアンでの耳からはみ出すほど重層した和声のエロスも味わい深いが、交響曲形式による即興がやはりイチオシだろう。主題を明快・多彩に展開・再現させながら、まさに「コシュロー的」音響を介し、一貫して調性的で形式性に遊んだ即興である。特に2楽章では69年夏の小型オルガンによる即興の幾つかを、また3楽章では74年の「スケルツォ・サンフォニック」を彷彿させる。コシュローの抽出しからは、実に多くの音楽が引き出され、加えて奔放かつ高い集中力を有しながら、音楽は生々しい呼吸に満ち溢れる。 Fugetzu
Jean Langlais aux Grandes Orgues de la Basilique Sainte-Clotilde à Paris - Improvisations sur des Thèmes Gregoriens enregistrées en 1986 - 1987 festivo (NL) 6951 842 ●ラングレ最後期のグレゴリアンに基づく即興演奏集。これほど複雑かつ濃醇な即興も珍しい。ラングレの音楽性を色濃く湛えた見事な即興だが、進行の中で次に予想される和声やパッセージへの展開がどんどん裏切られ、高度に知的なジャズの即興すら彷彿させる。オルガンという楽器の性質を根底的に捉えながらも、論理的な直線性から乖離し、円環的/循環的な拡張的進行とでもいえるような、不思議な時間感覚に覆われている。 Fugetzu
The Art of Improvisation / Jean Guillou, Organ Dorian (USA) DOR-90101 ●ギユーの即興録音の中でダントツなのがこれ。4ヶ所での即興録音を拾遺した ものだが、どの即興も峻烈かつ複雑な音響、知的かつ劇的さも有する展開に溢れ、 音響・音楽ともにギユーの骨頂を遺憾なく発揮した瞠目すべき内容ばかり。現代のオルガン即興演奏の ひとつの頂点をなすものと評価したい。 Fugetzu
Quatre improvisations de LOUIS ROBILLIARD Arion (F) ARN 38671 (LP) (廃) ●即興録音の難しさは、オルガニスト本人の最良のものがその時に引き出せるかどうか、という偶有性が重要な要件だ。 だが、それ以上にオルガニストが何時如何なる場合でも、己が本質を演奏に現出させうる必然性がなくては叶わぬこと。 ロビヤールの即興は、外面的形態や技能面よりも、演奏者本人の思弁的内奥への意識遡及が、呼吸のように自然に現れているところが興味深い。 Fugetzu
Orgel Jazz Improvisation / David Timm Raum Klang (D) RK9711 ●これは即興の一環として推す1枚である。パイプオルガンで ジャズを演奏する意義を求めても無駄。スタンダードも収録されているが、あくまで彩りとして捉え たい。荘重だが鈍重なパイプオルガンという巨大楽器で、ティムは即興を縦糸とし、ジャズを横糸として楽器操縦、音楽の 生命線ギリギリまでバランスよく織りなす。生々しい肉声の如きインストゥルメンタル・ジャズの感覚とは違い、 マニピュレートで組み立てていく即興の中にジャズが脈打つ、という点が面白い。 Fugetzu ☆ ; ●これは素晴らしく「生きの良い」演奏だ。第一印象は、オルガンという無機的な楽器を自家薬籠中のものとしている ライプツィヒの若手、ティムの初々しさ、清々しさであろう。このような観点から評価できるオルガン録音は少ない。 (後日談: 2001年9月、武蔵野市の招きで来日。 ジャジーな即興はもとより、後期ロマン派風の濃厚な和声に彩られた4楽章の交響曲などを披露した。録音より、生で聴く方が遙かに楽しめた。)
Pierre Pincemaille: Improvisations on the Organ Pierre Verany (F) PV790111 ●最近は編曲もので名を馳せるパンスメイユの音楽活動初期の即興録音。その才気 もさることながら、落とし込みの明快な即興演奏のため、少々作られた感もなくはない。が、知性と力強さとが 程よくブレンドされている。しかも、最近の潮流からは考えにくい、調性に拘った即興ということも、逆に その意欲的な姿勢として高く評価されよう。 Fugetzu
L'âme en Bourgeon (Hommage à Olivier Messiaen) / Improvisations of Naji Hakim on poems by Cécile Sauvage. Narrator: Catherine Salviat. Concert at La Trinité. Rejoyce (F) JOYCLASSIC 004 (Rec: 1998-Dec) ●メシアンの母セシル・ソバージュの詩『芽生える魂』の朗読とハキムの即興。 オルガンと朗読のコラボレーションは、オルガンの豊穣な音色が表現的に奏効し面白い内容の録音が多いが、これはその中でも出色。メシアン自身による録音もあるが、即興における演奏内容は格段にハキムの方が面白い。詩の感興表現の自在さと閃きの豊かさ、音のパレットの広大さ、どれを取っても素晴らしい内容で、ハキムの録音の中でも精彩を放つ1枚。Fugetzu ☆☆1/2 ('03.09.07 修正) ; ●ハキムは即興を得意とするが、これはその中でも格別霊感に満ちた演奏。本人から聞いたところでは、 この録音の直前、彼はひどい偏頭痛の発作に襲われていたという。 Toku 14) ヴァージル・フォックスのカリスマ
THE ART OF VIRGIL FOX - Volume II EMI Classics (USA) 7243 5 65913 2 5 ●フォックスのアクの強さは、正直、苦手でもあった。しかし、憑依したかの如き 熾烈な集中力を持つ一方で、とろけるほど美しい歌心を表現できる演奏家でもある。このアルバムは 古典から現代までの小品を集めた録音だが、美しいながらも何と血潮の濃い音楽になっていることか! 少々 過剰ともいえる表現性は、しかし彼だけしかなし得ない形で、最も自然な音楽の流れを作り出していることがわかるだろう。 Fugetzu
Vol. I も同様に優れている。どちらを聴くか、両方取るか、まずは曲目で決めてもいいだろう。 Toku Vol. III は対照的に、フランス・ロマン派や近代のオリジナル作品が中心を主体に聴ける。圧倒的な演奏の強度。 Toku ☆☆☆ [2004年6月現在、Amazon.jpでは在庫切れ] なお、3枚とも Amazonで 最初の5曲の冒頭を試聴できる。 15) ヴィルトゥオーソの系譜 - ルメア、ギユー、ニューマン、カーリー、ハキム
Jeanne Demessieux, Vol. II festivo (NL) FECD 132 - Rec: 1958-Jul − このCDは 2000年末で製造中止になりました − ●ドゥメシュの異形な音楽のフォーム変成例として、この盤ではモーツァルトの アダージョとフーガを挙げたい。スタッカート気味に、不協和音を悉(ことごと)く 大胆に衝突させつつ進み、かくもデモーニッシュな音楽かと唖然とした。この 破天荒さは、先のヴィドールと根元は同一だろう。対蹠(たいせき)的に バッハは、余りにも淡々と弾く。こうした極端な乖離もドゥメシュの魅力でもある。('03.08.07 修正) Fugetzu
Music for Organ / Anthony Newman Columbia (USA) M31127 (LP) (廃) ●彼のオルガン録音の中で、最もバーチュオーゾ的面目躍如の1枚。中でも、フランクのコラール第2・3番とリストは快演。彼のオルガンは、超速的スピードにも拘わらず、ペダル音をベースとしたピラミッド・バランスが、全く揺るがないのは不思議なほどだ。特にフランクの第 3 番コラールは、ピアニスチックな旋律線の絡みが見事に引き出される。リストも同様で、ピアノ編曲版の無闇なトリルを聴かなくとも、十分にピアノ版的味わいが楽しめる。 Fugetzu
SYMPHONIE / Wayne Marshall Organ Works by Widor / Roger-Ducasse / Hakim / Dupré Virgin (Classics) (UK) 7243 5 45320 2 3 - Rec: 1997-Oct ●こうしたシリアスな音楽を、マーシャルくらい楽々と弾きこなすオルガニストは 殆ど見当たらないのではなかろうか。とにかくうまい。うますぎるがゆえに ヴィドールなどは逆に退屈に思えてしまう。この録音の白眉はハキムの作品だろう。 恐らく作曲者本人を除き、ハキムの作品をこれだけ完璧にかつ魅力的に弾きこなせる人はいないのではなかろうか。 Fugetzu 16) いわゆる銘器 (歴史的オルガン)
François Roberday - Fugues et caprices Michel Chapuis - l'Isle sur Sorgue & Manosque Harmonia Mundi (F) HMO 30 530, (D) HMSO 530 530 (LP) (廃)
l'Orgue Historique - Frederiksborg, Hillerød Francis Chapelet Harmonia Mundi (F) HMO 30.579, HM 579, ORYX (UK) 502, Odyssey (US) 32 16 0068(Stereo)/0067(Mono) (LP) (廃) ●シャプレがHMに残した数々の歴史的楽器録音の中でも忘れがたい1枚がこれ。 コンペニウス・オルガンの良さは言うまでもないが、何といっても、 シャプレの快活でキレのよいスピード感とフレージングにより、音楽が瑞々しい生命力を得ている。Fugetzu
Orgues historiques - Baleares: Palma de Mallorca / Francis Chapelet Harmonia Mundi (F) 1901225 (準備中) Fugetzu
Nicolas de Grigny - Les Cinq Hymnes / André Isoir Calliope/Approche (F) 6912 ●イゾワールのバロック演奏には、様式的な面で疑念を感じさせるが、この グリニーの賛歌は、サン=マクシマンのイスナール(改修前)の壮麗な音響を朗々と大振りに響かせたもので、或る種 壮大な浪漫すら感じさせる、作品の本質とはまるで違う方向で奏効したもの。 この楽器の響きを楽しむには持ってこいの1枚。Fugetzu ☆ ; Toku
Die Schnitger-Orgel in Norden / Harald Vogel (Die Norddeutsche Orgelkunst II) ORGANA (D) 004 (LP) ●フォーゲルが Organa に録れた録音には、北ドイツの 数々の素晴らしい歴史的楽器が聴けるが、彼の録音の中でも滋味に溢れ、力感に満ちた演奏美学が集約されている。 中でも、このノルデンでの録音は、彼の録音の中でもベストといえるもの。 この楽器の美しい音響で弾かれるブクステフーデの「暁の星」は、耳の至福そのもの。 Fugetzu
Great Organbuilders of America: A Rretrospective (Volume 14) Thomas Murray / Newberry Memorial Organ, Woolsey Hall, Yale University, New Haven, Connecticut / 1929 Skinner Organ - Opus 722 JAV (USA) JAV 124 (2-CD set) ●(準備中) Fugetzu 17) 協奏曲 など
Leopoldas Digris, Organ (F. Poulenc, G. Bovet, C. Franck) Melodia (R) 33CM-03955-6 (LP) (廃) ●何と冷徹な音楽だろうか!が、プーランクの印象。通常演奏される微温的な音楽 から特絶した、一分の暖かみも感じられぬ厳格緻密な表情と音色。だが、面白い ことに、だからこそこのプーランクの作品が明確にその存在意義を主張している。 怖いもの見たさ以上に、音楽的な観点から、数ある録音の中でディグリス盤を特筆したい。 ボヴェの作品も、この不思議な感覚に存立した演奏であるだけに、一切の洒脱なきところが面白い。 Fugetzu 18) Non-Classical
Last updated: 2003. 11. 12 ... Compiled by Toku <cd100@orgel.com> .
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